no.3 判断を高めるために

僕の「考えながらの努力」。
それは判断能力を高めること。
ボールが来たとき。次にどんなプレーをするか。
その判断を完璧にしようとしたんだ。
僕はそのために、ものすごく多くのことを試した。
でもそのほとんどは失敗に終わった。

第一章 ゾーン別に考えればいいか 高校1年1学期
最初にやったのが、ゾーンで判断法を変えること。
守備ゾーンでは、パスのみ。
中盤ゾーンでは、ドリブル。
攻撃ゾーンではシュート、センタリングが加わる。

それを意識してサッカーをやってみた。

あ、ここは中盤だな。ボールが来た。ドリブルだ。
今はゴール前だから…

なんてことはできません。
そんなことを考える余裕なんてない。

第二章 イメージトレーニングをすればいいか 高校1年1~2学期
メンタルトレーニングを勉強した関係で
イメージトレーニングを始めた。
カセットテープ(当時)に自分の言葉を録音して
それを毎朝聞く。

「ボールが来た。相手が飛び込んできた。
私はボールを前へ出し、抜き去っていく。」
このように入れてみた。

すると確かに効果はある。
10%くらいはその通りにできる。

そこで僕はいろいろ言葉を工夫してみた。
でもその%(パーセンテージ)はほとんど上がらない。
結局ほとんどうまくなった気がしなかった。

第三章 敵味方の位置を記憶すればいいか 高校1年2学期
ボールが来る前に考えていることがいけないのかと
思い、それを変えてみた。

「味方が左、前、逆サイドに3人。敵は僕の前に1人。
それぞれの味方に1人ずつマークがついている」
という風に「敵味方の位置を記憶」してみた。

…効果なし。
試合開始5分でそんなこと忘れてしまう。

第四章 余裕を持ってプレーすればいいか 高校1年3学期
どんなに何かを意識しようとしてもすぐ忘れる。
試合では次を考える余裕がほとんどない。
だから、「余裕を持ってプレーすればいいかも?」
と考えた。

「今日は余裕を持ってプレーするぞ」と決意する。
試合が始まる。そうすると…

「余裕を持つ」ことを考える余裕なんてなかった。
ときどきできたが、90%はすぐに忘れる。

第五章 alertになればいいか 高校1年3学期
僕のサッカー部ではこんな言葉を使っていた。
「Be alert!」
神経を張り詰める、と訳せばいいのかな。
常に油断のない状態を保て、という意味だ。

これを練習中ずっと意識しようとした。

でもこれも長続きしない。
試合が白熱してくると、そんなこと忘れる。

第六章 次のプレーを考えればいいか 高校1年3学期~高校2年1学期
初心に返った。
シンプルに「ボールが来る前に次のプレーを考える」。
これを真剣にやってみた。

これが案外うまくいった。
ミスが少なくなり、ボールが奪われないようになった。

でも、「ドリブルができない」。
僕はドリブルが得意だった。
相手を抜き去ることが大の楽しみだった。
でも次を考えると、どうしても「パス」しか
考えられない。

ドリブルは直感的にするもの。
僕は悩んだあげく、そのやり方をあきらめた。
自分の武器であるドリブルを失えば、レギュラーにはなれない。
ほかのやり方を探そう。
そんな結論になった。

第七章 直前イメージをすればいいか 高校2年1学期
イメージトレーニングを応用して「直前イメージ」
というものを始めた。

例えば左サイドの味方にインサイドのゴロパスを出す。
そのとき、キックのフォームやボールの軌道を
イメージで描いてからパスを出す。

これをやると、プレーがとても正確になった。
投げやりなプレーがなくなった。
でもやはりサッカーの間それをずっと続けられない。
しばらくすると、そのことを忘れてしまう。

第八章 楽しくプレーすればいいか 高校2年1学期
つらい練習をしていると、サッカーがつまらなくなる。
僕もそうなった。
そこで昔を思い出し、楽しくサッカーをしてみようと
思った。

楽しくプレーすることを心がけると、面白いプレーが
できるようになった。
サッカーをやる気が出てきた。

でも、サッカーが上達したわけではなかった。

第九章 集中調整をすればいいか 高校2年2学期
こんな本を読んだ。
集中力―テストとトレーニング

その中に「集中レベルの調整」というのがあった。
我を忘れ、集中力が落ちてうまくプレーできなくなったら
腹式呼吸を3回やって自分を取り戻す、というものだ。

これまで幾度となくそうした状況に陥っていた僕は
「これだ!」と思った。
そしてその本の通りにイメージトレーニングをした。
すると確かに変わった。
目標を忘れてしまったときにはっと我に返って
「集中」できるようになった。

ところが長続きしない。
目標を意識する。忘れる。はっと思い出す。忘れる。
2、3回繰り返すともう戻らない。
実践的な価値はほとんどなかった。

第十章 精神を一定にすればいいか 高校2年2学期
なぜ目標を忘れてしまうのか考えてみた。
それは、僕の心が乱れるから。
何かの拍子にそれを見失うから。

それが分かった僕は、心を保とうとした。
どんなプレーの状況でも一定の精神状態を保つ。

それを意識しようとした。
でも結果は、いつもと同じ。
そのことさえも忘れてしまう。

第十一章 リメンバーすればいいか 高校2年2学期
ちょうどそのころ「明晰夢(めいせきむ)」
(夢の中で「これは夢だ」という自覚を持った夢)
についての本を読んだ。
みたい夢を見る方法 明晰夢の技術

その中に、面白いものがあった。
「self remembering(セルフ リメンバリング)」
例えば道を歩いているときに
「今、道を歩いている」ことを意識する。
更に「道を歩くことを意識している自分」も意識する。

これを日常生活で保つと、意識がピンと張り詰めた
ようになった。
「これをサッカーに使えないかな?」
そう思って練習中にもそれをやってみた。

先生の指示を指示を聞く。準備をする。
そこまでは「remember」を保てる。
でもいざサッカーになるとそんなこと意識さえも
できなかった。

第十二章 枝分かれ図を作ればいいか 高校2年2学期
サッカーの本を読んでいるうちに、こんな本に出会った。
サッカーファンタジスタの科学
その中にこんな言葉があった。
「うまい選手ほど、このときはこうする、という
枝分かれ図のようなものをはっきりと描いている」

つまり、こんなもののこと。

シュートできるか YES シュート
 ↓NO
シュートを打てる位置に味方がいるか YES パス
 ↓NO
ドリブルするスペースがあるか YES ドリブル勝負
 ↓NO


そこで僕は自分でこの枝分かれ図を作成した。
そしてイメージトレーニングをしてその通り
プレーできるようにしよう、そう思った。

ところが結果はまた同じ。
これを意識することさえできない。

第十三章 周辺視トラップ 高校2年3学期
そのころ部活の練習では「視野」をテーマにしていた。
ボールから目を離すタイミングなどを練習した。
そのとき、あることをひらめいた。
「ボールを周辺視野で見ながら正確にトラップできたら
視野が広がるぞ!」

そして僕は周辺視力を高める練習をした。
その頃「速読」というものをトレーニングしていた。
その中で周辺視力を高める練習をしていたのでちょうどよかった。

トレーニングをすると結構簡単にできるようになった。
そして狙い通り視野が広がった。
普通の人ならボールを見てしまうところで
顔を上げてトラップできるようになった。

この「周辺視トラップ」はうまくいった数少ないものの一つだが
ボールが来た時の判断はうまくならなかった。
僕の「10」の力が「11」に上がった実感はあったが
レギュラーになるために必要な「20」の力は身につかなかった。

第十四章 エネルギーを高めればいいか 高校3年1学期
第十一の予言」という本にヒントを見つけた。
「エネルギーを高める」という箇所があった。
詳しいやり方は省略する。
これをやると、体がまるで絶好調のときのようになった。

これならもう「忘れる」ことはないかな?
そう願い、実践した。
…でも残念なことに、結果はまた同じ。
試合が始まりしばらく経つと、そのことを忘れる。
体の状態も元に戻ってしまう。

第十五章 「型」を作ればいいか 高校3年1学期
どうしてこう何度も忘れてしまうのか。
僕は考えた。
僕の心の中に何か問題があるのでは?

僕はそんな中、「くせ」をつければいいのではと思った。
そして僕は始めた。
周りを見る。
次のプレーの概要を決める。
ボールが来る。
周囲の状況を瞬時に判断してパス・ドリブルをする。
そんな「状況判断の型」を作ろうとした。

一人でボールを壁に向かって蹴る。
戻ってくるボールを待ちながら、シミュレーションする。
テレビの試合を見て自分に当てはめてイメージする。
うまくいったプレーのイメージを何度も何度も繰り返す。

それでも、どんなに練習してもできなかった。
試合中に忘れてしまう。
試合をするだけで精一杯だった。

第十六章 全てを組み合わせればいいか 高校3年1学期
これまでに考えてきたことを全て振り返ってみた。
するとあることをひらめいた。
「そうだ。全部一緒に使ってみよう」
エネルギー、集中調整、楽しく、リメンバー、
その他細かいテクニックを覚えて、
試合直前に順番に意識して、試合に臨む。
…でも結果はいつもと同じ。

それでも僕は諦めなかった。
必ず道はあるはずだ!と思っていた。
そしてついに、その道を見つける。

第十七章 緊張除去 高校3年夏休み~2学期引退
出会ったきっかけは、とある成功哲学の通信講座のテキスト。
その中に「潜在意識のクリーニング」というものがあった。
昔の辛かった思い出を思い出し、ある作業をして
その不快感を取り除くというもの。
僕はその指示通りにイメージトレーニングをして
昔の思い出の不快感を取り除いた。
全くサッカーとは関係のない作業だ。

でもあるとき、ふとひらめいた。
「このやり方を応用して、サッカーをしているときの
緊張・恐怖を取り除いてみたらどうだろう?」

そして僕は実験を重ねた。
様々な方法を組み合わせた。
トラウマとか心理学の本を読んで勉強した。

そして2003年10月13日日曜日。
僕にとっておそらく高校サッカー最後の練習試合。
ここで認められなければ、Aチームに上がらなければ
チャンスは断たれる。

その日は小雨が降っていた。
グラウンドは少し湿っている。
僕はセンターサークルにいる。(この日はFWでした)
「ピッ!」と笛が吹かれ、試合が始まった。

試合中、僕は不思議な心理状態にいた。
緊張しない!
そう、とてもリラックスしていたんだ。

僕は右サイドでくさびのボールを受けた。
サポートに行く直前、自然に首を振れた。
そしてはっきりと状況が分かった。
僕のDFのアプローチが遅れている!

僕は左足インサイドでトラップしながらターンした。
相手は一瞬遅れて飛び込んでくる。
僕は相手の股にボールを通す。
抜き去った。

右寄りのペナルティーエリア内に入った。
シュートチャンス!
残念ながら右に外れた。

僕は信じられない位素晴らしいプレーができた。
スルーパス。
股抜き。
壁パス。
run with the ball

前半が終了。
「これならいける!」僕はそう思った。
ところが…

雨のため試合中止。
僕の夢もここで終わった。

結局僕の夢は叶うことはなかった。
小雨が降る帰り道、「ああ、これで終わったな」と呆然とした
気持ちで帰路についていた。

第十八章 高校卒業後
僕は高校を卒業した。
大学へは行かず、自力でビジネスをすることになった。
当然サッカーからも遠ざかった。

その後社会人のサッカーチームに入部してみたり、
いろいろと試行錯誤を続けてみたりした。

現在のところ僕はサッカーに積極的に関わってはいない。
大きな変化があれば、このホームページに記載しようと思う。

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no.4
判断能力を高める6つの方法

判断の質を高める方法をまとめてみました。

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